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『えひめトレード&トレンド2026年4月号』海外駐在員レポート 2026年4月30日

 

 

海外駐在員レポート 

 

~中東情勢緊迫化とベトナムのエネルギー供給~

   

   ベトナムのガソリンスタンド

                   

 

                         

 

                                               ジェトロハノイ事務所
(株式会社愛媛銀行 ソリューション営業部付)

                                                                        

     藤 村 寛 太

 

 

 

 

 

 

 

 


 

■石油備蓄と政府の対応

 

ベトナムの石油備蓄は、企業の義務備蓄などを含め30日分程度にとどまり、国の戦略備蓄は7日分とされています。有事における供給余力は限定的です。

 国内燃料供給の約7割は、ギソン製油所(中部タインホア省)と、ズンクアット製油所(中部クアンガイ省)が担っています。中東情勢の悪化により、クウェートからの原油調達が不透明化しましたが、ギソン製油所は代替調達先の確保を進めるなど、両製油所とも一定の操業継続のめどを発表しています。

 

ベトナム政府は、石油価格安定基金の活用や石油製品への時限的なゼロ税率措置の導入などによる燃料価格の引き下げを図るほか、バイオガソリン(E10)の全国販売を前倒しするなど、燃料価格高騰に伴う混乱を抑制しています。また、ファム・ミン・チン首相(当時、4月7日付でレ・ミン・フン氏が新首相に就任)がロシアを訪問し、ウラジーミル・プーチン大統領と面談するなど、首脳外交を通じた燃料・原料確保や、輸入先の多角化にも取り組んでいます。

 

 

 

 

■市民生活への影響

今のところ燃料が安定的に供給されていることから、生活面で混乱は生じていないものの、燃料価格の上昇は物価にも波及しつつあります。2026年第1四半期の消費者物価指数(CPI)の上昇率は前年同期比3.51%でしたが、3月単月では4.65%にまで加速しました。

また、航空燃料の調達難を背景に、国内線の減便や運賃上昇などが生じており、移動手段に一定の制約が出ています。

 

 

 

 

■日系企業への影響

①輸入依存の石油化学産業による構造的制約
ベトナムでは石油化学産業の基盤が未発達で、石油を精製するための原油にとどまらず、樹脂、塗料、溶剤などの石油化学製品の大半を輸入に依存しています。そのため、今回の情勢下で、企業活動における熱源や原材料途絶の懸念が高まっています。

 

②熱源・原材料の調達難
製造業では、工場の熱源としてLPGを使用するケースが多いものの、輸入LPGの約7割は中東からの供給でした。既に国内のLPGの供給はひっ迫しており、現地ディストリビューター経由の調達が困難になっています。こうした中、国営ガス会社のPVガスも供給義務履行が困難として、不可抗力宣言を出しています。日系企業からは、LPGの納入が不透明となり、操業への影響を懸念する声もあります。

また、LPGを原料とするポリプロピレンなどの樹脂材料について、ベトナム国内メーカーが新規注文の受付を停止する動きも出ています。日系商社のヒアリングによれば、現在は1~3カ月分の在庫で対応しているものの、世界的なナフサ不足や供給制約の影響を受け、川上の供給が先細ることから、今後の供給見通しは不透明です。特に特定の樹脂や溶剤は国内での代替調達が難しく、対応の余地は限られます。

 

③ コスト上昇圧力
 石油化学製品の原材料は、上記のように調達が不透明になるなか、価格自体も高騰しています。さらに、燃料高に伴う輸送費の上昇がコストを押し上げています。輸送費は通常時の1.5~2倍に達しており、輸入原材料では価格と海上運賃の双方が上昇する二重の負担となる場合があります。これらのコスト上昇分は、今後2~3カ月で末端価格に転嫁される可能性があります。

 

 

 

 

■まとめ

中東情勢の影響はベトナムに限った話ではありませんが、とりわけベトナムにおいては、エネルギー・原材料を海外に大きく依存する産業構造が可視化されたものといえます。
その一方で、ベトナムは引き続き高い経済成長が見込まれ、1億人を超える人口を有するなかでの製造拠点としての人材の集積、消費市場としての拡大可能性に大きな変化はありません。政府も燃料の価格抑制策や供給安定化策を講じており、今のところ市場機能そのものが大きく損なわれている状況ではありません。

今後は、調達先の多元化に加え、LPGとCNGの双方に対応可能な設備導入や省エネルギー投資など、企業単位でのリスク対応の重要性が一段と高まると考えられます。

ジェトロは、こうした環境変化を踏まえた上で、ベトナム市場への輸出・事業展開を検討される企業に対し、エネルギー安全保障をはじめとする政策動向や日系企業の動向などの最新情報の提供、制度・実務面での相談対応などを行ってまいります。

 

 

 

参照

LPG、石油原材料を中心に入手困難な状況、中東情勢長期化すれば4月以降の操業に影響も(ベトナム) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース – ジェトロ

ベトナム最大のギソン製油所が5月末までの操業に必要な原油を確保と発表、政府も対策進める(ベトナム、中東) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース – ジェトロ

石油化学製品の供給に懸念高まる、製品や輸送費の高騰も重しに(ベトナム、日本、中東) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース – ジェトロ

トー・ラム書記長が国家主席を兼任、新首相にレ・ミン・フン氏(ベトナム) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース – ジェトロ

 

 

カテゴリ: 情報誌EHIME TRADE&TREND